大型サンドブラスト処理の技術と品質基準|SSPC・ISO規格に準拠した重防食下地処理

目次
素地調整(下地処理)の重要性とは?
サンドブラスト処理とは?その目的について
サンドブラストとは?
サンドブラストの目的
- 梨地加工
加工後の表面は梨地と呼ばれる光沢を抑えた高級感のあるマットな仕上がりとなります。 - アンカー効果(投錨効果)
表面に微細な凹凸を形成することで、塗装やメッキなど密着力を飛躍的に高め、過酷な環境下での塗装剥離を防止。 - 機能性の向上
滑り止めや艶消し、反射防止といった効果や放熱性や保油性の向上、キズや汚れが目立ちにくくなる効果があります。
- 表面の清浄化
金属の酸化被膜である黒皮(ミルスケール)の除去、表面に付着した錆やゴミ、汚れなどを除去します。 - 塗膜や樹脂の剥離
古くなり劣化した塗装や樹脂などを根こそぎ剥ぎ取り、新品同様の素地に戻します。 - バリ取りや清掃
精密な研削力調整により、母材を傷めずにバリ取りやクリーニングが可能です。
- ショットピーニング効果
金属表面を圧縮残留応力を与え、疲労強度(繰り返し荷重がかかる際に破壊に至るまでの強度)を向上させます。 - 耐摩耗・硬度向上
表面の組織を緻密にすることで、摩擦に強く傷がつきにくいタフな表面を作ります。
サンドブラスト処理の仕組みと構造
サンドブラスト処理|加圧式の構造
サンドブラスト処理|重力吸引式の構造
大型ブラストルームの設備構造
- 投射 3台からなる高圧コンプレッサから送られた圧縮空気を制御し、特殊ノズルより研削材を噴射。
- 回収 ブラストルーム地下の回収用スクリューによって、研削材を常時回収。
- 選別 回収された研削材から使えなくなった研削材や粉塵・ゴミを分離除去。
- 供給 健全な研削材のみを再びブラスト用タンクへ供給。
ここでは「サンドブラスト」を例に解説しましたがブラスト処理には使用する研削材(砂、鉄、ガラスなど)によって、グリットブラストやショットブラストといった様々な種類が存在します。
施工対象物の材質や、求められる粗さ(アンカーパターン)によって最適な工法は異なります。
各種ブラストの特性や使い分けについての詳細は、以下の比較解説ページをご覧ください。
▶ 関連記事:ブラスト工法の種類と使い分け
サンドブラスト以外にも鉄粒を用いる「グリットブラスト」や「ショットブラスト」など、ブラストには様々な種類があります。 研削材による仕上がりの違いや、用途別の選び方については以下のページで詳しく解説しています。
> ブラスト加工の種類と特徴について詳しく見るサンドブラストとグリットブラスト
研削材による区分けと特徴
様々な研削材の種類と特徴
- 素材
加工対象物がステンレス製など非鉄金属の場合、鋼製研磨材を使用すると表面に鉄粉が付着することで発生する「もらいサビ」を防ぐため、加工対象に合わせた素材を選ぶ必要があります。 - 形状
加工効果に影響します。
鋭角が多い多角形状は素地調整などに適した研削や除去が目的。
球状はバリ取りやピーニング効果といった改善が目的。 - サイズ
加工力に影響します。
大きな研磨材は表面に与える影響も大きく、小さな研磨材は表面に与える影響も小さくなります。 - 硬度
研削力に影響します。
大きければより粗く、低ければ損傷を抑えた加工が可能。 - 比重
加工力に影響します。
比重(重量)が重いものほど研削性に優れます。 - 粉砕性
施工コストと資源循環性(再利用による環境負荷の低減) に影響します。
小さいものは回収・再利用が可能なのでコストパフォーマンスに優れます。
原田鉄工の高品質サンドブラスト
- グリットと遜色ない「粗面化」
当社の高圧噴射技術によってアルミナ等の研削材を使用した場合でも、塗装前の素地調整として十分な表面粗さを確保することが可能です。
表面粗さの数値もグリットブラスト処理と大きく変わらない、強固な密着力を生むアンカーパターンを形成します。 - 非鉄金属の「もらいサビ」を完全防止
ステンレスやアルミ製品に対し、鋼製の研削材を使用すると表面に微細な鉄粉が残留し「もらいサビ」の原因となります。
当社は非鉄系研削材を適切に選定することによりもらいサビを防止しながら、塗装に最適な素地調整やサビ除去が可能です。 - 施工環境の完備
サンドブラストの研削材はグリットと比較し粉砕されやすく粉塵が発生しやすい特性がありますが、当社では大型の集塵・換気システムを備えたブラストルーム内で施工するため作業員の安全性及び作業性を両立させています。
サンドブラスト処理のメリットとデメリット
サンドブラストのメリット
- 幅広い素材に対して有効
サンドブラストは化学的な薬品などを使用せず、研削材を直接衝突させる物理的な処理方法なので加工対象となる素材は問いません。
【対象素材】鉄、非鉄金属、石、ガラス、木材、プラスチック、セラミック、樹脂、ゴム、カーボン、布、半導体・電子部品 - 圧倒的な密着力
手工具や電動工具などでは不可能なレベルで表面を微細に粗面化。
塗料を「いかりやくさび」のように食い込ませる(アンカー効果)によって、過酷な環境下でも剥がれない強固な密着性を実現します。 - 仕上がりを調整可能
サンドブラストは様々な研削材を使用することができます。
研削材の種類やサイズ・形状、処理時間などを変化させることによって、仕上がりの見た目や質感を変化させることが可能。 - 複雑な形状への対応力
ノズルから噴射される研削材は手作業や工具が一切届かないような狭い奥まった箇所へも均一に到達し、完璧な清浄度を実現します。
また特殊なノズルを装着することによって、長尺配管の内部やタンク内部のような範囲も処理可能となります。 - 圧倒的な施工スピード
極限まで高速化され噴射する研削材は広い範囲を一度に処理することが可能なため、大型構造物や製品でも短納期での施工が可能です。 - 機能性の向上
サンドブラストによって表面はザラザラとした肌触りで滑り止めの効果、微細な凹凸で光を乱反射する防眩、表面積増加による放熱性・保油性の向上などの機能を向上させます。 - 意匠性の高さ
サンドブラスト後の梨地(なしじ)と呼ばれる光沢を抑えた高級感のある仕上がりは、その意匠性が高く評価されており商品に新たな付加価値を創造します。
サンドブラストのデメリット
- 激しい粉塵と騒音の発生
サンドブラストは研削材が砕けることによって大量の粉塵が発生します。
また高圧縮空気の高速排気により激しい騒音も伴うため防塵・防音、集塵などを施した専用の設備環境が必要となります。 - 製品の変形や歪みのリスク
ブラストは圧縮空気と研削材を高速で噴射するため、素材の厚みや強度が不足している場合、塑性変形による反りや歪みが生じることがあります。
また一度施工すると元の表面状態に戻せない「不可逆的な表面加工」なので、ネジ部や精密部などの部分はマスキングなどで保護する必要があります。 - 作業者の安全確保と防護装備
有害となる粉塵の吸引や金属を削るほど高速噴射された研削材から身を守るため専用の防護服や送気マスクの着用が必須であり、作業環境の設備・管理が重要となります。 - 天候や湿度の影響
ブラスト直後の活性化した金属表面は非常に繊細で、湿気などにより短時間で戻り錆(再発錆)が発生するリスクがあります。
そのため、施工環境の温湿度管理が品質を大きく左右します。 - 速やかな防錆処理
ブラスト処理後はサビやすいため、4時間以内に防錆処理を行うことが推奨されています。
速やかにプライマー塗装など行い、清浄化された素地を保護する必要があります。 - 研削材の回収と廃棄コスト
設備が大型であるほど、使用される研削材も膨大な量が必要となります。
大量に使用する研削材の回収、粉砕された研削材の廃棄物処理にコストと労力がかかります。
ブラスト処理の品質規格|ISOとSSPC
素地調整の主要な品質規格について
- SSPC(Steel Structures Painting Council)
産業・海上構造物の保護を目的とするアメリカ発祥の規格。
エネルギー分野や海外案件で頻繁に引用され、洗浄度や方法によって細かく16規格に分類されている。
※2021年にNACEと統合しAMPPという組織になりましたが、現在も世界中の仕様書で「SSPC」の規格名称が継続して使用されています。 - ISO 8501-1(INTERNATIONAL STANDARAD)
世界中で同じ品質や製品・サービスを規格化し、円滑な国際取引を目的とするスイス発祥の規格。
写真見本を用いた視覚的な判定を主とする規格です。 - JIS Z 0313(日本産業規格)
日本の産業製品の品質向上や安全確保を目的とした規格。
ISO規格と整合性が図られており、国内の公共工事などで広く引用されています。
素地調整の規格・基準についてさらに詳しく
上記で紹介した規格のほかにも、実務では各規格間のより詳細な対照表や、具体的な判定基準の知識が必要になる場面があります。
当サイトでは「ブラスト規格とISO規格の清浄度比較」や、現場で役立つさらに専門的な技術解説ページをご用意しています。
設計仕様の確認やより深い専門知識が必要な方は、ぜひ以下のリンクより詳細情報をご確認ください。
【技術資料】素地調整・下地処理の規格について
SSPCとISOのより詳細な比較表や、鋼材の腐食度に応じた処理基準など、実務に直結する専門情報を公開しています。
> 素地調整の規格についてさらに詳しく見る素地調整規格 比較一覧表
※SSPC・ISO 8501-1・JIS Z 0313に基づいた素地調整規格の対応一覧です。
社内資料や設計検討に便利な「PDF版」はこちらから
素地調整規格表(PDF)をダウンロード素地調整規格の選定における重要なポイント
| 塗膜寿命を左右する要因 | 寄与率 |
|---|---|
| 素地調整(1種ケレンと2種ケレンの差) | 49.5% |
| 塗回数(1回塗り部と2回塗りの差) | 19.1% |
| 塗料の種類 | 4.9% |
| その他(塗装技術、気候条件など) | 26.5% |
密着力を生む「投錨(とうびょう)効果」
- ブラスト処理(1種ケレン)
サビや黒皮を完全に除去するだけでなく、金属表面に微細な凹凸(アンカーパターン)を形成します 。
これにより塗料が物理的に食いつく「投錨効果」が働き、過酷な環境下でも剥離しない強固な塗膜を実現します。 - パワーツール処理 / ハンドツール処理(2種 / 3種ケレン)
電動工具や手工具によるケレンは、表面の浮きサビを除去することはできますが、強固に付着したサビや酸化被膜は許容される場合があります。
またブラストのような均一な凹凸を形成するのが難しいため、長期的な密着力ではブラストに及びません。
まとめ|高品質な大型サンドブラストは原田鉄工へ
全天候対応型の大型ブラストルーム・塗装工場を完備
国内(JIS)・国際(ISO/SSPC)規格に基づいた厳格な品質管理
熟練の技術による精密施工
サンドブラストに関するよくある質問
ブラスト加工後の塗装
せっかく清浄化された表面も酸素・水分と接触することで腐食が進行していくので、早急に塗装などの防錆処理を行う必要があります。
一般的に素地調整後は4時間以内に塗装することが好ましいとされています。
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用語解説|ブラスト加工で使われる基礎用語まとめ
- サンドブラスト(ブラスト/1種ケレン 英語:Sand blast)
表面処理(ケレン)方法のひとつ。
表面へ研削材と呼ばれる粒子を高速で吹き付けることにより表面を加工する。
「珪砂」という砂を研削材としていた為、サンドブラストを呼称される。
- ブラスト(ショットブラスト/グリッドブラスト/サンドブラスト/1種ケレン 英語:Blast)
高圧で圧縮した空気を研削材と呼ばれる粒と一緒に噴射し、製品に衝突させることで表面のゴミ、汚れ、塗装などを除去します。
またブラストによって表面は微細な凹凸が形成されるため、塗料などコーティングの密着性が向上。
塗装前の素地調整や梨地加工などに使用されている。 - ケレン
ケレンは元々英語のクリーン(Clean)から来ているようで、塗装前の下地を綺麗にするという意味になります。
1種ケレン~4種ケレンまで工法と除錆率により分類される。 - 研削材(研磨材/研掃材/メディア)
ブラストで使用される加工対象物に直接ぶつけるための粒子です。
球体、多角形状などの形状や粒径、材質が多くの種類が存在するため、対象物の材質や処理効果に合わせて研削材を選定する。
表面処理(英語:Surface treatment/Surface preparation)
素材表面の性質を向上させる目的に行う処理のことです。
研磨・塗装・メッキ・熱など多くの処理方法があります。- 素地調整(英語:Surface preparation)
下地処理(英語:Surface treatment/Surface preparation)
下地をより塗装に適した状態にする処理の事です。
下地は既に防錆処理を施された面の事を言い、塗り重ねなどを行う前に行う処理となります。
ミルスケール(英語:Mil scale)
黒皮とも呼ばれ、鋼材を製造する際に出来る表面の酸化被膜です。
熱間圧延という製造方法では金属を高温に熱し形成するため、大気中の酸素と結合する事で黒皮になります。
塗装を施す場合でも黒皮は密着性が悪いので、除去することが一般的です。- アンカーパターン
ブラスト処理などで金属やコンクリート表面へ形成される、細やかな凹凸(粗面)のこと。
塗料の密着性を大幅に高め、剥がれにくくする「アンカー効果」をもたらします。 - アンカー効果(投錨効果/ファスナー効果)
接着剤や塗料などの流動性が高い物質が表面にある微細な凹凸に入り込み、硬化する事で釘や楔のように引っかかり密着性が向上する原理。
素地調整で行う研磨・目粗し作業は表面積の増加とこのアンカー効果を期待して行われています。 - 梨地加工(シボ加工/マット仕上げ)
表面処理において意図的に微小な凹凸をつくる加工。
滑り止め、反射防止などの効果だけでなく、指紋や汚れなどを目立ちにくくする効果もあります。 - ショットピーニング(英語:Shot peening)
金属の表面に球状の粒子を高速で衝突させる表面処理。
球状の粒子(ショット)により表面には丸みを帯びた窪みが多数形成される。
潤滑性や耐摩耗性向上、疲労強度や表面硬度の向上、圧縮残留応力の付与など多くの効果がある。 - ミルスケール(英語:Mil scale)
黒皮とも呼ばれ、鋼材を製造する際に出来る表面の酸化被膜です。
熱間圧延という製造方法では金属を高温に熱し形成するため、大気中の酸素と結合する事で黒皮になります。
塗装を施す場合でも黒皮は密着性が悪いので、除去することが一般的です。 - 錆(さび/腐食生成物 英語:Rust)
金属表面の金属原子が環境中の「酸素」「水分」などと酸化還元反応を起こして生成される腐食物。
酸素や水があるところに鉄を放置すると、錆を生じる。
表面に凹凸が出来て反応面積が増大するため、一旦生じた錆は加速度的に進行する。 - 清浄度(英語:Cleanliness)
金属表面や潤滑油、空気などの対象とした物質、物体の清浄さの度合い。
一定の面積や容積に対し含まれる汚染物の数や質量によって表される。 - 除錆度(英語:Preparation grade)
JIS Z 0310では"素地調整用ブラスト処理方法通則 清浄度の中、ミルスケール及びさびの除去程度"と定義。
ミルスケール(黒皮)やさびをどれだけ除去できたかを目視にて評価します。 - 重防食塗装
橋梁やプラント、鉄塔などの構造物を長期間、保護する為の塗装。
塗装を塗り重ねる事で厚い塗膜を作り、厳しい環境下でも長期間耐え製品の寿命を延ばします。 - 防錆処理(英語:Antirust treatment)
「ぼうせいしょり」又は「ぼうさびしょり」と読みます。
金属を錆させない、錆びにくくする為の処理。
























