塗料の基本!塗料の種類や耐久性について

塗料の基本!種類と耐久性について
塗料は物質へ塗装し、表面に強固な塗膜を形成する事で「保護」「美装」「機能の付与
3つの効果をもたらします。

私たちの身の回りにあるほとんどの製品はこの塗料によって様々な色彩に彩られています。
しかし塗料はただ色を付けて、綺麗に見せるだけではありません。

塗料の目的は大きく分けて3つあります。
  • 表面を強固な塗料で覆い、保護する。
  • 色彩や質感などを付与し、美しくする。
  • 断熱や耐熱など様々な機能性を付与する。

本記事ではそんな塗料についての基礎知識、塗料の種類や耐久性について詳しく紹介します。

塗料の歴史

「塗料」とは表面に塗布(塗装)する事で、対象物を保護・美装・機能を付与するための材料です。

くから日本では漆(うるし)から採取した樹液を精製したものを接着剤代わりに使用していたようです。
しかし表面をこの漆で覆う事によって気温変化・湿気・害虫などから保護する事が判明し、漆が日本で初めての塗料として広まっていきます。

その後、明治初期の黒船来航にて初めて油性塗料が持ち込まれ、鉄の需要増加と工業化に伴い国内での塗料開発・生産が活発化していきました。

現代では多くの国内塗料メーカーがあり、様々なニーズに合わせた塗料を開発・生産しています。

黒船来航が1854年とされているので、現代式の塗料が国内で使用されるようになったのは、ここ100年ちょっと位の歴史となります。
思ったよりも短い気もしますが、鉄をあまり使わない当時は必要性があまりなかったのかも知れませんね。

近年では移動に欠かせない自動車・船舶・新幹線・飛行機、ビルや大型施設、橋梁など大型の建造物、家具や生活用品など
ありとあらゆるものへ塗装が行われており、塗料は私たちの生活に欠かせないものとなっています。

塗料の3大機能

「保護」「美装」「機能の付与」は塗料の3大機能と呼ばれており、以下のような効果となります。

『保護』

塗料で表面を覆い隠す事によって、対象物を守る機能です。
紫外線、雨や湿気、塩分などの環境的要因から劣化を防ぎ、長持ちさせます。

『美装』

塗料は対象物に色や模様、光沢、質感など追加し、美しく見せる機能があります。
様々な色彩や質感に塗装された製品は私たちの生活に彩りを与えてくれます。

『機能の付与』

塗料には耐火性や耐熱性、耐薬品性、耐油性など様々な機能を付与するものがあります。
現在、塗料メーカーの絶え間ない研究・開発により、様々な機能を持った塗料が存在しています。

【塗料が持つ機能の一例】
耐火性・・・火災発生時に火の延焼に耐性を付与する機能
耐熱性・・・数百度を超えるような高温に耐性を付与する機能
耐薬品性・・・酸・アルカリなどの薬品に耐性を付与する機能
耐油性・・・油・有機溶剤などの油類に耐性を付与する機能
防音性・・・振動を抑制し音を軽減する特性を付与する機能
防水性・・・通常の塗料より高い耐水性を付与する機能

塗料の構成

塗料は「顔料」「樹脂」「溶剤」「添加剤」4つの成分で構成されています。

『顔料』

塗料へ色彩を与える役割を持っています。
顔料は大きく4種類に分けられます。
着色顔料・・・塗料を色付ける
体質顔料・・・粘度や比重の調整、塗料の増量、艶の調整
さび止め顔料・・・錆(腐食)の発生・進行を防止
骨材・・・塗料の厚みや質感を調整

『樹脂』

塗料の主成分であり、性質を左右する最も重要な役割を持っています。
エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、アクリル樹脂など多様樹脂が塗料には使用されています。
耐候性や耐熱性といった耐性、塗料の能力・特徴が決まります。

『溶剤』

溶媒や希釈材とも呼ばれ、顔料・樹脂など溶かす、薄める役割があります。
これにより塗料の成分を均等に混ぜ、塗装しやすくなります。
溶剤は2種類あり水性塗料では「水」、油性塗料では「有機溶剤」となります。

『添加剤』

塗料の性能を向上・補助する役割があります。
耐久性・美観や作業性などを向上させる様々な化学物質を組み合わせています。

【代表的な添加物の一例】
消泡剤・・・塗装時に生じる気泡の除去・抑制する
分散剤・・・顔料の潤滑・分散を安定化する
たれ防止剤・・・粘性を付与しタレを防止する
沈殿防止剤・・・粘性を付与し顔料の沈殿を防止する
硬化促進剤・・・塗料の乾燥・硬化を早める

水性塗料と油性塗料

塗料は溶剤によって「油性」と「水性」の2種類に分けられます。
油性塗料は溶剤にシンナーを主成分とした有機溶剤を使用。
水性塗料は溶剤に水を使用。

油性塗料と水性塗料のメリット・デメリットは以下のようになります。

油性塗料

メリット
  • 耐久性に優れている
  • 仕上りが美しい
  • 乾燥時間が短い
  • 密着性が高く、様々な素材に塗装可能
  • 塗膜が非常に硬い
デメリット
  • 有機溶剤が揮発するため、強いにおいがある
  • 健康や環境に害がある「VOC(揮発性有機化合物)」が発生するため、換気や防毒マスクなど対策が必要
  • 引火性が高いので保管・管理に注意が必要

水性塗料

メリット
  • においがほとんどしない
  • 環境と人体に影響が少ない
  • 引火する危険性が低いので保管・管理が容易
  • 水で希釈するため、作業場所を選ばない
  • 使用した道具の洗浄が容易
デメリット
  • 油性塗料と比較すると光沢感、耐久性が低い
  • 乾燥に時間が必要で、気象条件に左右されやすい
  • 金属には密着しにくい性質がある

塗料の種類

塗料は含まれている樹脂によってその性能や特性が決まります
そのため「○○樹脂塗料」といった形で含まれている樹脂で大まかに種類分けされる事が多くあります。
塗料の種類とその樹脂の特徴について紹介します。

ポリエステル樹脂塗料

合成樹脂調合ペイントとしてJIS規格化され「アルキド樹脂塗料」「フタル酸樹脂塗料」などもこの種類に属します。
安価で粘度が低く作業性に優れ、光沢のある仕上がりとなるので幅広く使用されています。
耐水性や耐薬品性が低く、耐久年数は短めです。

エポキシ樹脂塗料

エポキシ樹脂を用いた塗料でエポキシ樹脂塗料と変性エポキシ樹脂塗料の2種です。
エポキシ樹脂塗料は防食性、耐水・耐薬品性、耐熱性が高く密着性も優れているので、耐久性を求められる製品ではほぼ必ず使用されています。
しかし紫外線に弱い特性を持っているため、屋外など太陽に晒される場合には上塗を併用するなどの対策が必要です。

アクリル樹脂塗料

アクリル樹脂を用いた最も一般的な塗料で、原料など調整の幅が広いため多くの種類のものが存在します。
金属、コンクリート、樹脂、木材など様々な素材で対応する塗料が開発されています。
安価で光沢、耐候性、耐水性などにも優れていますが、一般的な耐久年数は短めです。

ウレタン樹脂塗料

ウレタン樹脂を用いた塗料でウレタンはポリウレタンの事を指し、ポリウレタン樹脂塗料とも呼ばれます。
光沢、耐候性、耐水性などに非常に優れており、高い耐久性を持ちます。
木材から自動車や橋梁など様々な分野で上塗塗料として使用されています。

フッ素樹脂塗料

フッ素樹脂を用いた塗料で最も高い性能を持った塗料とされています。
最高レベルの耐候性、耐薬品性、耐熱性、撥水性を持っています。
耐久性が高いため塗替え周期の長期化、修繕・補修点検の低減などを目的に六本木ヒルズや東京スカイツリーなど
大型建造物にも使用されています。

シリコン樹脂塗料

シリコン樹脂を用いた塗料でアクリル樹脂、ポリエステル樹脂などによって変性されています。
耐熱性に非常に優れており、耐候性、耐水性、耐薬品性なども高いです。
100℃を超えた高温になる製品に耐熱塗料として使用されています。

1液型塗料と2液型塗料

塗料には「1液型塗料」と「2液型塗料」があります。
1液型塗料とは主剤のみの1缶に溶剤を入れて使用。
2液型塗料とは主剤と硬化剤(副剤)の2缶を混ぜ合わせ、溶剤を入れて使用。
※塗料によっては溶剤を使用しないものもあります。

1液型の特徴はそのまま塗装できるので手軽に使えますが、もちろんデメリットもあります。
費用対効果を考え、どちらを使用するか決める必要があります。

1液型塗料

塗料が主剤1つだけなので、水・有機溶剤で希釈をするだけで手軽に使用できるのが
最大のメリットとなります。
[メリット]
  • 安価
  • 計量が不要で攪拌するだけで使用でき手軽
  • 余っても再度利用できる
[デメリット]
  • 耐久性が低い
  • 塗料の種類に限りがある

2液型塗料

塗料が主剤と硬化剤の2つを混ぜ合わせ、水・有機溶剤で希釈する必要がありますが、
耐久性が高いことが最大のメリットです。
[メリット]
  • 耐久性が高い
  • 豊富な種類の塗料がある
[デメリット]
  • 主剤と硬化剤を正確に計量・混合する必要があり手間
  • 混合後の塗料は使用可能時間がある
  • 混合後の塗料は再利用不可

塗料の注意点

[塗料選びの注意点]
  • 素材によって塗料の密着性が異なりますので、塗料と素材の相性を確認する必要があります。
  • 塗料の種類によっては調色ができないものがあります。
  • 下地の状態によっても塗料の使用可否は変化します。
  • 下塗・中塗・上塗など塗り重ねを行う場合は、塗料同士の塗り合わせ(相性)に注意が必要です。

[塗料使用時の注意点]
  • 塗料使用時には防毒マスク、手袋、ゴーグル等の保護具を適切に着用しましょう。
  • 可燃物の為、火気厳禁です。
  • 換気を常に行える環境にて使用しましょう。
  • 2液型の場合は正確な混合比と十分な攪拌を行いましょう。
  • 適切な素地調整を行う事で塗料は密着し、本来の性能を発揮します。

[塗料使用後の注意点]
  • 使用後はなるべく密閉し、直射日光を避け40℃以下になるよう保管します。
  • 残った油性塗料は産業廃棄物として処分する必要があります。
  • 塗装で使用した道具は硬化する前に綺麗に清掃しましょう。

まとめ

表面を紫外線や雨風などから「保護」
色や模様、光沢、質感を与える「美装」
耐火性や耐熱性、耐薬品性などの「機能の付与」
3つの機能を対象物へ与える事が可能です。

塗料は1液型と2液型、樹脂、水性と油性などの違いによって性能特性が大きく変わります。
『使用方法』『使用環境』求めている『耐久年数』『予算』『塗装対象物の素材』などによって塗料は使い分ける必要があります!

塗料の性能と特性を十分理解し、適切なものを使用しましょう。

塗料性能を引き出す素地調整

性能や特性によって「高価な塗料」や「安価な塗料」など様々な塗料がありますが、塗装工程ではそのような「塗料の性能」より重要とされる要素があります!
それは素地調整(下地処理)と呼ばれる塗装前の表面を綺麗にする作業です。
この作業は製品の美観だけでなく、塗装の耐久性に多大な影響を及ぼします。

塗装後に形成される塗膜(塗料が完全硬化した膜)の寿命は「素地調整」、「塗装回数」、「塗料の種類」、「塗装技術」など多くの要因によって決定されます。
その中でも最も大きな影響を与える要因が「素地調整」です。
「ブラスト処理」、「電動工具処理」の素地調整の方法が違うだけで塗膜寿命に約50%もの影響を与えるとされています。

「塗装の回数を増やす」、「高性能な塗料を使う」、「高い技術にて塗装する」ことも重要ではありますが、塗膜を長持ちさせるには適切な素地調整が何よりも重要となります。
「1種ケレン(ブラスト処理)」を行う事が塗膜の長寿命化への最も確実な手法です。
そのため塗装工程では素地調整(下地処理)が最も重要な作業と言われています。

素地調整について

素地調整は「どんな作業か?」「良く使われる規格」
ついて詳しく紹介しています。
「ケレン作業」とも呼ばれる素地調整
ケレンの「目的」や「効果」について詳しく紹介しています。
ブラスト加工の規格
ケレンの作業方法と効果について
素地調整には「ブラスト加工」「電動工具処理」「脱脂」など様々な作業方法があります。
最も優れているとされる「ブラスト加工」について
代表的なブラスト加工4種
・圧縮空気で噴射する「エアーブラスト」
ブラスト加工とは?代表的な加工方法の原理とメリット・デメリット

塗料や塗装の事は原田鉄工にお任せください

「塗装の事で困っている」「どんな塗料を使えば良いか分からない」「耐久性の高い塗装をしたい」
「ブラストで素地調整をしたい」などブラストや塗装でお困りでしたら、原田鉄工へお気軽にご相談ください。

原田鉄工は創業より80年に渡り、機械製品、橋梁、船舶、大型構造物など様々な製品を塗装してまいりました。
一般的な屋内・屋外に設置する製品はもちろん、臨海部、海上や海中などに設置される金属にとって最も過酷となる環境下の製品を多く塗装しています。

塗料の性能を最大限に引き出し、塗装の耐久性を高めるためには素地調整が重要となります。
そのため原田鉄工では素地調整の中でも最高グレードとされる大型ブラスト設備を2基所有しています。
タンクの内部や大型組立品といった複雑な形状にも対応可能な「エアーブラスト」にて加工を行っており、
使用する研削材を変えることにより、材質・形状・希望の仕上がりなど多くのご要望にお応えします!

また塗装設備も所有しておりますので、素地調整後4時間以内が基本とされるプライマー塗装までの時間間隔も原田鉄工なら迅速に塗装可能です。

製品の耐久性を決定づけるのは「素地調整」と「塗装」の品質です!
・ブラスト加工によって付着物の一切ない清浄な金属素地を露出
・使用する環境や求められる耐久性によって最適な塗装仕様を選定
・錆戻りや再び表面が汚染される事の無いように迅速なプライマー処理
・規定となる塗膜厚に管理しながらムラの無い均一な塗装
・仕上がりの美観、塗膜厚を徹底的に検査

長期間「綺麗」で「錆びない」塗装を提供し、製品の長寿命化及びトータルコストの削減に貢献します。
広島のブラストは原田鉄工にお任せください
※PDFファイルの閲覧には、 Adobe Reader のインストールが必要です。くわしくは Adobe Reader のダウンロードページ(外部リンク)をご覧ください。

用語解説|塗料の基礎用語まとめ

本ページで使用する専門用語の説明

  • 塗装(英語:Painting)    
    金属の表面処理の一種で塗料を塗ることで表面に塗膜を形成させる。
    防錆、美観、機能の付与など様々な用途がある。

  • 樹脂(英語:Resin)
    樹脂には自然由来となる漆、松油などの天然樹脂と石油等の化石資源を原料とした合成樹脂があります。
    塗料で使用されるのは合成樹脂となります。
    合成樹脂は様々なものに加工されており、プラスチックやポリ袋、衣類にも使用されています。

  • 有機溶剤(英語:Organic Solvent)
    他の物質を溶かす性質を持った有機化合物の総称。
    有機物とは炭素(C)を含む化合物。
    揮発性が高いものが多く、吸い込むと人体に悪影響を与える可能性があるため使用時には換気や防毒マスクなどの対策が必要。

  • 塗膜(英語:Coating film)
    塗装した塗料が完全硬化した塗料の被膜。
    塗膜により塗装対象物を覆い隠す事でサビや劣化から保護します。

  • VOC(揮発性有機化合物 英語:Volatile organic compounds)
    揮発しやすく、常温常圧で気体となる有機化合物の総称。
    トルエン、キシレン、ホルムアルデヒドなど200種類以上の様々な種類があり、人体や環境への悪影響が問題となっている。
    全世界で多量のVOCが排出されているので自主的なVOCを減らす取り組みが必要。

  • 素地調整(英語:Surface preparation)
    素地をより塗装に適した状態にする処理の事です。
    素地調整で素地のサビ・汚れ・劣化した塗膜など除去し、更に形成した凹凸によって塗料の付着性を大きく向上させます。
    塗装寿命に影響する原因は素地調整によるものが50%を占める程、重要な処理となります。

  • ブラスト(グリッドブラスト/サンドブラスト/1種ケレン 英語:Blast)
    高圧で圧縮した空気を研削材と呼ばれる粒と一緒に噴射し、製品に衝突させることで表面のゴミ、汚れ、塗装などを除去します。
    またブラストによって表面は微細な凹凸が形成されるため、塗料などコーティングの密着性が向上。
    塗装前の素地調整や梨地加工などに使用されている。


2025年-11月
1
2
3
4
5
6
7
8
9
10
11
12
13
14
15
16
17
18
19
20
21
22
23
24
25
26
27
28
29
30
原田鉄工株式会社
〒733-0036
広島県広島市西区観音新町3丁目10番11号
TEL.082-232-2445
FAX.082-293-0286

・工業用機械装置の設計、製作
・各種製缶加工
・サンド
・グリットブラスト施工・重防食塗装施工
TOPへ戻る