塗装工程で最重要となるケレンとは?作業方法と効果

塗装はケレンで性能が決まる!?作業方法と効果について
ケレンとは英語の「Clean(クリーン)」が語源とされ、塗装を行う前の表面を綺麗にする作業です。

ケレンを行う事で以下のような効果があります。
  • 塗料の密着性を向上させ、塗装を長持ちさせる。
  • 表面を平滑にする事で、仕上がりが向上する。

本記事ではケレンの作業方法と効果について詳しく説明します。

目次

ケレンとは?

通常の表面には錆・酸化被膜・汚れ・ゴミなどの「異物」が必ずと言っていいほど、付着しています。
ケレンはこれらの異物を取り除き、表面を綺麗にする作業となります。
「素地調整」や「下地処理」と同じく塗装の前処理として、表面を塗装に適した状態とする事を目的とします。

素地調整は素地(塗装されていない表面)に行う作業。
下地処理は下地(塗装されている表面)に行う作業。
定義はありませんが、ケレンは「素地調整・下地処理を含めた総合的な塗装の前処理」と一般的に認識されています。

ケレンの種類と作業方法

ケレンは作業方法と異物の除去率によって1種ケレン~4種ケレンと分類されます。

1種ケレン > 2種ケレン > 3種ケレン > 4種ケレン
上記の順番で除去率が高く、より効果的なケレン作業となります。

※ケレンは正式な工業規格用語ではなく、通称です。
 本記事では一般的な分類に基づいて紹介していますが、実際の現場や発注者によって定義や解釈が異なる場合がありますのでご注意ください。 
1種ケレン~4種ケレン 作業の比較

1種ケレン

1種ケレン
1種ケレンは研磨材と呼ばれる粒子を高速で衝突させるブラスト加工によって表面を研磨します。
4種類のケレンで最も優れた効果・洗浄度となります。
表面の錆・塗膜・酸化被膜・汚れといったあらゆる異物をほぼ完全に除去し、清浄な素地を露出させます。
ブラストの加工方式や研磨材の種類は問いませんが、表面の95~99%以上を異物がない表面とする必要があります。

2種ケレン

2種ケレン
2種ケレンはディスクサンダー、ワイヤーホイールなどの電動工具や手工具を併用し、表面を研磨します。
1種ケレンに次いで優れた効果・洗浄度です。
表面の錆・塗膜・汚れを可能な限り除去します。
完全に除去する事が難しい、強固に固着した錆や塗膜は許容されます。

3種ケレン

3種ケレン
3種ケレンはサンドペーパー、スクレーパー、ワイヤーブラシなど手工具を使用し、表面を研磨します。
最低限の効果・洗浄度となり、一般的に錆の発生が初期段階、小面積の場合に行われることが多いです。
表面の汚れ・付着性の低い錆と塗膜を除去します。
除去する事が難しい付着性の高い錆と塗膜は許容されます。

4種ケレン

4種ケレン
4種ケレンは3種ケレン同様サンドペーパー、スクレーパー、ワイヤーブラシなど手工具を使用し、表面を研磨します。
最も簡素なケレン方法で錆や汚れがほとんど見られない状態の場合に行われます。
簡単に表面を研磨する事で塗料の密着性を高める目的となります。

ケレンの目的と効果

ケレンの目的は塗料の密着性や耐久性を高め、その性能を十分に発揮させる事にあります。
ケレンの語源とも言われるクリーンの意味である「清掃」
1種~4種ケレンに共通する作業の「研磨」
これらの清掃と研磨によって塗装の仕上がりと耐久性は大きく向上します。

清掃-表面の不純物を取り除く

ケレン作業前の表面には様々な異物が付着しています。
ゴミ、汚れ、油分、錆、酸化被膜、劣化塗膜などの異物は塗料の付着性を大きく低下させてしまい、
塗料の早期剥離や密着不良など深刻な問題を引き起こす原因となります。
そのため塗装前には必ずケレン作業を行い、表面の異物を除去する必要があります。
清浄化された表面になって初めて塗料の性能は発揮されます

また当たり前ですが表面にゴミなどが付着している状態で塗装を行っても、綺麗に仕上がる事はありません。
ケレン作業で表面の異物を除去する事で、塗装後の仕上がりは向上します。

研磨-微細な傷をつくり付着力を向上

1種ケレンのブラスト加工、2種ケレンの電動工具処理、3・4種ケレンの手工具処理など様々な方法がありますが、
全ては表面を研磨する作業です。
研磨する事によって表面には細かい傷がつけられ凹凸が形成されます。
塗装時にこの凹凸に塗料が入り込み硬化する事で強く密着し、格段に剥がれにくくなります。(アンカー効果)

アンカー効果によって塗装の耐久性能は飛躍的に向上します。
そのため屋外などの金属にとって過酷な環境下にて設置・使用される製品にはケレン作業が欠かせません。

ケレン作業の注意点

ケレン作業は正式な工業規格でなく通称であり、工事現場や発注者によって定義や解釈が異なる場合があります。
こうした認識の違いによるトラブルを防ぐためにも正式な工業規格の活用を推奨します

ケレン作業を含む「下地処理」「素地調整」といった工程の規格は以下のようなものが広く使用されています。

SSPC(Steel Structures Painting Council)規格
アメリカに本部を置く産業・海上構造物の保護を目的とした非営利組織です。
産業・海上構造物のコーティング分野に特化した規格を定めています。
素地調整を行う方法や洗浄度などによって細かく規格化されており、16規格ほど存在します。

ISO(International Organization for Standardization)規格
スイスに本部を置く世界中で同じ品質や製品・サービスを規格化し、円滑な国際取引を目的とした非営利組織です。
製品からマネジメントまで様々な規格があり、5万規格以上とされています。
表面処理に関するものは6規格あります。

SIS(Swedish Institute for Standards)規格
スウェーデンに本部を置くスウェーデン規格協会又はスウェーデン工業規格と呼ばれる団体です。
素地調整に関わる規格はISO規格と同一です。



ブラスト加工の規格
下記リンクにてブラスト加工に使われている「ISO規格」と「SSPC規格」ついて詳しく紹介しています。

ケレン作業の重要性

ケレン作業の重要性
塗装作業で最も重要とされているのはケレン作業といった素地調整(下地処理)です。
この工程は製品の美観だけでなく、塗装の耐久性に多大な影響を及ぼします。
塗装後に形成される塗膜(塗料が完全硬化した膜)の寿命は「素地調整」、「塗装回数」、「塗料の種類」、「塗装技術」など多くの要因によって決定されます。
その中でも最も大きな影響を与える要因が「素地調整」です。
1種ケレン(ブラスト処理)と2種ケレン(電動工具処理)の違いだけで塗膜寿命に約50%もの影響を与えるとされています。

「塗装の回数を増やす」、「高性能な塗料を使う」、「高い技術にて塗装する」ことも重要ではありますが、塗膜を長持ちさせるには適切な素地調整が何よりも重要となります。
「1種ケレン(ブラスト処理)」を行う事が塗膜の長寿命化への最も確実な手法です。

そのため塗装工程では素地調整(下地処理)が最も重要な工程と言われています。

まとめ

ケレン作業とは塗装前の表面を綺麗にする作業です。
「研磨による凹凸を形成」、「異物の除去」によって塗装の仕上がりと耐久性を決定付ける最も重要な工程とされています。
1種ケレン~4種ケレンといった形で作業方法や使用する道具によって分類されています。
塗装を行えば分からなくなってしまう地味な工程ではありますが、
塗膜寿命の影響は「塗装回数」や「塗料の種類」を大きく上回ります

製品の要求される耐久年数、塗り替え工事の場合は現状の発錆状態や予算などを考慮して適切なケレン方法を選定する事が重要です。

またケレンは通称であり、正式な工業規格ではないため工事や発注者によって認識が異なる場合があります。
正式な工業規格であるSSPC規格・ISO規格の採用を推奨します。
一種ケレンと二種ケレンの違い

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用語解説|ケレン(塗装前処理)の基礎用語まとめ

本ページで使用する専門用語の説明

  • ケレン
    ケレンは元々英語のクリーン(Clean)から来ているようで、塗装前の下地を綺麗にするという意味になります。
    1種ケレン~4種ケレンまで工法と除錆率により分類される。
    塗装物に対して塗料の密着性を向上させるために表面に凸凹のキズをつけたり、中古品なら古い塗料や錆を剥がすなど行います。

  • ミルスケール(黒皮/酸化被膜 英語:Mil scale)
    黒皮とも呼ばれ、鋼材を製造する際に出来る表面の酸化被膜です。
    熱間圧延という製造方法では金属を高温に熱し形成するため、大気中の酸素と結合する事で黒皮になります。
    塗装を施す場合でも黒皮は密着性が悪いので、除去することが一般的です。

  • 素地調整(英語:Surface preparation)
 素地をより塗装に適した状態にする処理の事です。
 素地調整で素地のサビ・汚れ・劣化した塗膜など除去し、形成した凹凸によって塗料の付着性を大きく向上させます。
 塗装寿命に影響する原因は素地調整によるものが50%を占める程、重要な処理となります。

  • 下地処理(英語:Surface treatment/Surface preparation)
    下地をより塗装に適した状態にする処理の事です。
    下地は既に防錆処理を施された面の事を言い、塗り重ねなどを行う前に行う処理となります。

  • 研磨剤(研削材/研掃材/メディア)
    ブラストで使用される加工対象物に直接ぶつけるための粒子です。
    球体、多角形状などの形状や粒径、材質が多くの種類が存在するため、対象物の材質や処理効果に合わせて研磨剤を選定する。

  • 塗膜(英語:Coating film)
    塗装した塗料が完全硬化した塗料の被膜。
    塗膜により塗装対象物を覆い隠す事でサビや劣化から保護します。

  • 錆(さび/腐食生成物 英語:Rust)
    金属表面の金属原子が環境中の「酸素」「水分」などと酸化還元反応を起こして生成される腐食物。
    酸素や水があるところに鉄を放置すると、錆を生じる。
    表面に凹凸が出来て反応面積が増大するため、一旦生じた錆は加速度的に進行する。

  • アンカー効果(投錨効果/ファスナー効果)
    接着剤や塗料などの流動性が高い物質が表面にある微細な凹凸に入り込み、硬化する事で釘や楔のように引っかかり密着性が向上する原理。
    素地調整で行う研磨・目粗し作業は表面積の増加とこのアンカー効果を期待して行われています。


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