ブラスト加工とは?代表的な加工方法の原理とメリット・デメリット

ブラスト加工とは、研磨材(メディア)と呼ばれる微細な粒子を対象表面に衝突させ、表面を加工する技術です。
この加工によって、以下ような効果があります。
・ 表面に付着した錆や塗膜の【除去】
・ 表面を粗面化させ、密着性を向上させる【研削】
・ 表面を叩き、耐摩耗性や疲労強度を高める【表面改善】
さらにブラスト加工は、目的や設備によって大きく4つの加工方式に分類されます。
・ エアーブラスト : 圧縮空気で研磨材を噴射する方式
・ ショットブラスト : 羽根車を高速回転させ、遠心力で研磨材を投射する方式
・ ウェットブラスト : 水と研磨材を混合し、圧縮空気で噴射する方式
・ バキュームブラスト : ノズル内で噴射と回収を同時に行う、粉塵対策型の方式
本記事では各方式の「原理」を図解付きで分かりやすく紹介し、「メリット・デメリット」を比較します!
加工方法の選定に迷われている方は、ぜひ参考にしてください。
目次
ブラスト加工とは?
ブラスト加工に使われる研磨材
ブラスト加工で使用される粒子は「研磨材」又は「研削材」や「メディア」などと呼ばれます。
この研磨材となる粒子は噴射・投射が可能であれば、何でも研磨材となります。
そのため研磨材には多種多様な素材・形状・サイズなどが存在しています。
研磨材で重要とされるのは素材・形状・サイズ・硬度・比重・粉砕性となります。
・素材
加工対象物がステンレス製など非鉄金属の場合、鋼製研磨材を使用すると表面に鋼の成分が付着することで発生する「もらい錆」などを防ぐため、加工対象に合わせた素材を選ぶ必要があります。
・形状
加工効果に影響します。
鋭角が多い多角形状は素地調整などに適した研削や除去が目的。
球状はバリ取りやピーニング効果といった改善が目的。
・サイズ
加工力に影響します。
大きな研磨材は表面に与える影響も大きく、小さな研磨材は表面に与える影響も小さくなります。
・硬度
研削力に影響します。
大きければより粗く、低ければ損傷を抑えた加工が可能です。
・比重
加工力に影響します。
比重(重量)が重いものほど加工性に優れます。
・粉砕性
施工コストと資源循環性(再利用による環境負荷の低減) に影響します。
小さいものは回収・再利用が可能なのでコストパフォーマンスに優れます。
ブラスト加工は研磨材を使い分ける事で対応する素材、仕上がり、加工効果が大きく変わります。
ブラスト加工の目的と効果
ブラスト加工には大きく3つの効果があります。
除去-研磨材を衝突させることで表面に付着している錆、塗膜、樹脂、汚れ、酸化被膜などを除去します。
・塗装前の素地調整
表面の錆や酸化被膜を除去する事で塗料の密着不良、早期剥離を防ぎます。
・劣化、古くなった塗装や樹脂などを除去
再びコーティングを行う事で新品に再生させることができます。
・バリ取り
バリを除去すると同時に表面を平滑化する効果もあります。
・クリーニング
ダメージレスな研磨材を使用する事で母材への損傷を抑えた清掃が可能です。
研削-研磨材が表面を削ることで表面を粗面化させます。
ブラスト加工により表面に微細な凹凸が無数に形成されます。
凹凸に塗料などのコーティングが入り込み硬化する事で格段に剥がれにくくなります。
・研磨
球状の研磨材を使用すれば、表面を平滑化する効果があります。
・梨地
ブラスト加工後のザラザラとした表面は梨地と呼ばれます。
光が乱反射する事で光沢が抑えられた高級感のある仕上がりはその意匠性が高く評価されています。
・粗面化
粗面化され表面積が増大する事により摩擦抵抗の増大、放熱性・保油性の向上、防眩性の向上、キズや汚れが目立ちにくくなる防汚・防傷などの効果があります。
改善-研磨材が表面を何度も叩く事で表面を改善します。
研磨材が表面を叩き、金属表面を圧縮するため疲労強度(繰り返し荷重がかかる際に破壊に至るまでの強度)を向上させます。
・耐摩擦性能
表面の硬さ、強度が高まるために耐摩擦性能を向上させます。
・寿命延長
疲労強度・耐摩擦性能の向上により材料の寿命を延長させる効果があります。
ブラスト加工の分類
ブラスト加工は大きく以下のように分類されます。
ブラスト加工4種類の原理とメリット・デメリット
一般的に広く普及しているブラスト加工4種類について「原理」とそれぞれの「メリット・デメリット」を紹介します。
その加工方法も研磨材となる粒子を表面に衝突させ、加工を行う部分は同様となります。
エアーブラスト(別名:乾式ブラスト)
コンプレッサによって作られた圧縮空気(エア)を動力源とし、ノズルより研磨材を高速噴射する方法です。
作業員が手動操作によって加工する「手動式」、ロボットにより自動で加工する「自動式」両方に対応可能です。
様々な研磨材を使用する事が可能で、使用する研磨材によって一般的な呼び方が変わります。
砂(スラグやアルミナ)=サンドブラスト
グリット(多角形状の鋼)=グリットブラスト
ドライアイス=ドライアイスブラスト
- 特徴
エアー圧力の調整、研磨材を選定する事により研削力・仕上がりの微調整が可能。
- 加工目的
コーティング前の素地調整・下地処理としての粗面化、錆や汚れなどの除去、塗装剥離、梨地加工、クリーニングなど。
【メリット】
- 比重の軽いガラスなどから重量のある鋼など豊富な種類・サイズを使用できる。
- ノズルの形状を変更する事で、配管内部や入り組んだ製缶品の内側など特殊な製品も均一に加工可能。
- 加工目的、製品形状、製品素材など最も広く汎用性に優れている。
【デメリット】
- 圧縮空気と一緒に研磨材を噴射するため、研磨材と粉塵が広範囲に飛散する。
- 圧縮空気の力で強度の無い製品は変形や歪みが発生する場合がある。
- 作業員の防具の他、粉塵飛散防止の専用設備、集塵装置、研磨材の回収設備、大型コンプレッサなどの設備が必要で初期コスト・運用コストが高い。
ショットブラスト(別名:機械式ブラスト)
モーターを動力源としインペラ(羽根車)を高速回転させ、遠心力を利用し研磨材を高速投射する方法です。
製品を装置やコンベアラインなどに設置し、自動で加工する仕組みです。
使用される研磨材はショットと呼ばれる金属製球体の研磨材が大半となります。
- 特徴
自動で広範囲に研磨材を投射するため、大面積・多ロット製品の加工に適している。
- 加工目的
バリ取り、表面研磨、梨地加工、疲労強度向上のピーニング処理など。
【メリット】
- 構造的にシンプルかつ自動で加工を行う為、設備などの初期コストや運用コストを抑える事が可能。
- 広範囲に研磨材を投射するため、大面積の加工が容易。
- 球状の研磨材を使用するため、粉塵の発生・飛散が比較的少ない。
【デメリット】
- 一定の方向・距離・角度から投射するため、複雑な形状などは加工が難しい。
- 加工力を調整できないので、精度の高い加工には不向き。
- 研磨材の種類に制限があるため、対応できる加工も限定的です。
ウェットブラスト(別名:湿式ブラスト)
エアーブラストと同様に圧縮空気を動力源としますが、水と研磨材の混合液を高速噴射する方法です。
作業員が手動操作によって加工する「手動式」、ロボットにより自動で加工する「自動式」両方に対応可能です。
粒子の小さな研磨材を利用する事が多いです。
- 特徴
水と研磨材を混合させる事でエアーのみでは制御が難しい微粒子を使用し、精密な微細加工が可能。
- 加工目的
デリケートな素材への微細な粗面化、表面研磨、クリーニング、バリ取り、梨地加工など。
【メリット】
- 薄物、電子部品、プラスチックなどのデリケートな素材への損傷を最小限に抑えた加工が可能。
- 通常では扱えない微粒子を研磨材として使用できる。
- 水と研磨材を混合しているため、粉塵の発生が少ない。
【デメリット】
- 水に弱い、錆びやすい、濡れる事で性質が変化する素材などは加工できない。
- 研削力が低いので、対応できる加工に限りがある。
- エアーブラストに追加して水を循環・研磨材と混合・攪拌させる装置、排水等の設備が必要となり初期コスト・運用コストが最も高い。
バキュームブラスト(別名:吸引式ブラスト)
エアーブラストと同様に圧縮空気を動力源としますが、ノズル内にて研磨材の噴射及び回収を行う方法です。
作業員が手動操作によって加工する「手動式」となります。
屋外工事での使用を想定としておりコンプレッサの出力にも限りがあるため、基本的に大きな粒子の研磨材を利用するのは難しいです。
- 特徴
屋外工事での加工が主用途であり、ノズルの内部で加工するので、研磨材の飛散・粉塵の発生を防ぐ。
- 加工目的
屋外工事でのコーティング前の下地処理、錆や汚れなどの除去、落書きなどの塗装除去、アスファルトやコンクリート製品のクリーニングなど。
【メリット】
- 研磨材の飛散・粉塵の発生がほとんどないため、屋外工事において最小限の養生作業で済む。
- 研磨材の飛散がほとんどないので、同一空間で複数人の同時加工が可能。
- 機材・設備がコンパクトなので、運搬と設置が容易。
【デメリット】
- 研削力が高くないので、小面積でも加工に時間と労力が必要となります。
- ノズルを加工面に密着させる必要があるので、基本的に平滑面の加工に限定される。
- 研磨材の種類に制限があるため、対応できる加工も限定的です。
ブラスト加工は塗装工程において最も重要とされるのが「素地調整」や「下地処理」の工程となります。
製品の仕上がりはもちろん、耐久性に多大な影響を及ぼします。
1種ケレンと呼ばれる「ブラスト加工」と2種ケレンと呼ばれる「電動工具処理」の処理方法の違いだけでも、塗膜寿命に約50%もの影響を与えるとされています。
これは「塗装回数」や「塗料の種類」を大きく上回る影響力です。
「塗装の回数を増やす」、「高性能な塗料を使う」ことも重要ではありますが「ブラスト加工で素地調整をする」だけで
塗装寿命は大幅に延長する事が可能となります。
ブラスト加工には2種類の規格が世界中で広く活用されています。
SSPC(Steel Structures Painting Council)規格
ISO(International Organization for Standardization)規格
下記リンクにてブラスト加工に使われている「ISO規格・SSPC規格」と素地調整・下地処理の「作業方法」と「重要性」について紹介しています。
まとめ
ブラスト加工とは研磨材となる粒子を加工対象表面に衝突させる表面処理加工の一種です。
塗装前の素地調整・下地処理、洗浄・クリーニング、粗面化、バリ取り、塗装剥離、疲労強度向上、デザイン性や機能性の付与など幅広い目的・用途によって加工されています。
ブラスト加工は研磨材が「乾いている or 濡れている」、研磨材の加速方法が「圧縮空気 or モーター」この2点で大きく分類される。
「エアーブラスト・ショットブラスト・ウェットブラスト・バキュームブラスト」4種類の加工方法が広く普及しており、それぞれ使用できる研磨材の種類やサイズ、メリット・デメリットが異なります。
- ブラスト加工を行う「周辺環境」
- ブラスト加工対象となる製品の「素材」「形状」「強度」
- ブラスト加工を行う「目的」
- ブラスト加工に使用する「研磨材の種類」
これらを考慮し、どの方法でブラスト加工を行うか?選定する必要があります。
広島のブラストは原田鉄工にお任せください
「ブラスト処理が可能な業者を探している」「大型製缶品のブラスト処理をしたい」「素地調整から上塗まで一括で施工してほしい」
ブラストや塗装でお困りでしたら、原田鉄工へお気軽にご相談ください。
原田鉄工では素地調整専用の大型ブラスト設備を2基所有しています。
汎用性の高い「エアーブラスト」にて加工を行っており、使用する研削材を変えることにより、材質・形状・希望の仕上がりなど多くのご要望にお応えします!
また塗装設備も所有しておりますので、素地調整後4時間以内が基本とされるプライマー塗装までの時間間隔も原田鉄工なら迅速に塗装可能です。
創業より80年間、海上・海中といった厳しい環境下にも耐える重防食塗装を専門としてきました。
創業より80年間、海上・海中といった厳しい環境下にも耐える重防食塗装を専門としてきました。
製品の耐久性を決定づけるのは「素地調整」と「塗装」の品質です!
・ブラスト加工によって付着物の一切ない清浄な金属素地を露出
・錆戻りや再び表面が汚染される事の無いように迅速なプライマー処理
・規定となる塗膜厚に管理しながらムラの無い均一な塗装
・仕上がりの美観、塗膜厚を徹底的に検査
長期間「綺麗」で「錆びない」塗装を提供し、製品の長寿命化及びトータルコストの削減に貢献します。
製缶・ブラスト加工と塗装の事ならお任せください。
※PDFファイルの閲覧には、 Adobe Reader のインストールが必要です。くわしくは Adobe Reader のダウンロードページ(外部リンク)をご覧ください。